20060715

日本海は日本の海?

ここのところのテレビのニュースなどで、「北朝鮮のミサイルが日本海に向けて発射された」という表現をたびたび聞いた。日本海=日本の領海のようなイメージがあったので、「日本に向けて発射」のようなニュアンスが含まれている気がした。でも示されている地図を見ると、落下点は大陸寄り、ロシア沿岸に近い地域だった。そこも日本海という名なのか、よく知らなかったのでワールドアトラス(日本版)を繰ってみた。

確かに日本と大陸の間にある海の名は、「日本海」だった。他の名前は表記がないので、この領域はすべて日本海なのだろう。では日本の領海はどこまでで、落下地点は日本の領海の中だったのだろうか。ニュースではそういう細かい点まで(常識だと思っているのか)言ってくれないので、自分で調べてみた。

海洋法によると、海域には領海、排他的経済水域、公海の区別があって、領海は沿岸国の12カイリ以内の範囲をいい、これは領域内にあたる。排他的経済水域というのは領海の外、200カイリまでの範囲の水域で、漁業や石油の採掘などをする権利がある。ただし他国も上空飛行や海底パイプラインを敷いたりできる水域で、独占的なものではないらしい。そして公海というのは、どの国の主権も及ばない水域で、どの国も他国から干渉を受けずに自由に使っていい水域だそうだ。(ちょっとびっくり。海上とは言え、地球上にそんな場所があるとは)

で、今回の北朝鮮のミサイルの落下地点は、どの水域に属していたのだろう。少なくとも日本の領海、排他的経済水域の外のようだ。ロシアに近いので、もしかしたらロシアの水域内かもしれない。それとも北朝鮮の水域なのか、あるいは公海なのか。こんな重要な事実関係について、連日の報道からは知ることができない。多大な時間をかけて熱心にニュースを流し、番組変更までして特別番組をやっているにもかかわらず。いったいどういう問題意識と目的で、報道をしているのか疑いたくなる。

それと今回「日本海」という名称が気になったので、少し調べてみた。やはりと言おうか、日本海呼称問題と呼ばれているものがあり、日本海の呼び名に対して、韓国が東海、韓国海などを主張しているという。実際、韓国では「東海」、北朝鮮では「朝鮮海」と呼んでおり、ロシアや中国では「日本海」の意味の語を、また国連も2004年に「日本海」を公文書に使用することを明言しているという状況らしい。日韓両国のそれぞれの主張やGoogle Earthでの記述の変遷について、Wikipedia「日本海呼称問題」に詳しく載っているので、興味のある人はそちらを。

この論争のどちらに分があるかは置いておくとして、ひとつ思ったのは、もし「日本海」を日本が主張するならば、その使い方にはそれなりに神経を使ったほうがよいのではないか、ということ。今回のミサイル問題のようなことが起きたときに、「日本海」という言葉をあたかも日本の領海のようにとられかねないニュアンスやあいまいさを残して使うのはやめて、誤解を生まないよう、きちんと日本海の水域区分を説明した上で使うなど工夫したほうがよいのではないかと思う。そういう洗練された公平な使い方を国内的にも、国外的にもできたときに、自分の国名を冠した水域名を周辺の国にも認めてもらえる資格がある気がする。

20060701

W杯選手同士の交流と反人種差別主義

A time to make friends / Say no to racism
友だちになるとき。人種差別主義にノーを。
これは今ドイツで行われているワールドカップサッカー2006のキャンペーンワードだ。昨日(7月1日早朝)の準々決勝アルゼンチン対ドイツ戦の試合前、ピッチ上で両チームのキャプテンがそれぞれにこの問題に対する自身の訴えの言葉を読んだ。ドイツはバラックが、アルゼンチンはソリンが行なった。ソリンの宣言はとてもよかった。決勝トーナメントに進んだベスト8のチームのキャプテン全員が読むことになるという。試合以上に楽しみだ。内容もそうだが、どんな声でどんな調子で読み上げるのか、興味深い。
このトピックについて、昨日、Reviewsに
「ワールドカップとanti-人種差別主義」
というタイトルで文章を書いたので、興味ある人は読んでください。

ワールドカップサッカーはサッカーの世界大会、ということでもちろん試合もおもしろいけれど、それだけではない。それぞれの国の事情や各国間の選手の交流など、周辺の話題も興味深いものがある。

今までのところで、テレビで放映されたもので気づいたものとしては、予選ラウンドの最終戦で試合した韓国とスイスの選手の交流。2−0でスイスに破れた韓国のパク・チソン選手が、試合後のフィールドでスイスのフォーゲルと長いこと話をしていた。朴(パク)とフォーゲルはオランダのPSVにともに所属していたことがある。朴はいまはマンチェスター(プレミアリーグ)に所属しており、今回のW杯でも試合前のインタビューに英語で答えていることから考えると、たぶん英語での会話(もしかしたらオランダ語かもしれないが。あるいはチャンポン)だったのではないか。

中田英がブラジルのロナウジーニョやロナウドと、ブラジル戦の前に談笑している様子もカメラに映った。こちらはポルトガル語とイタリア語のチャンポン、あるいはスペイン語も混じっていたりして(ブラジル2選手は現在スペインでプレイしている)。いずれにしてもラテン語系のこれらの言葉は、それぞれの言葉で話してもかなりの部分通じるらしい。

98年のフランス大会の頃は、アジアの選手が試合の前後にこうして他国の選手と交流する様子はほとんど見られなかったと思う。アジアからたくさんの選手がヨーロッパなど海外のリーグで仕事をするようになってのことだろう。日本や韓国のプレイヤーも、ヨーロッパや南米、アフリカのプレイヤーたちが普通にしていることを、今しはじめているのだろう。これはきっとプレイにも影響してくることだと思う。