20080125

マドリードへ。出荷風景。JPの不思議。

葉っぱの坑夫の日々の活動、作業の中で、もっともわたしが不得手としていること、なかなか慣れずいつもバタバタして汗をかいていることに出荷作業があります。
個人読者への発送からショップへの納品、海外への出荷など、ひとつひとつはそれほどでなくても、さまざまな量、発送形態に対応するのにいつもあたふたしています。出荷のためのダンボール箱も、梱包の量によって対応できるものを何種類か揃えたりしてはいるのですが、それでもあれこれ箱を試して商品を出し入れしたり、重さを計ったり、調整したりと、どうしてもバタつきます。

ただでさえそのようにバタつく出荷作業ですが、イレギュラーなケースが発生すると、さらにそれがエスカレートして半日、ときに日をまたいで手を取られてしまいます。今回のマドリードへの出荷もいろいろありました。準備を始めてから2日、いや3日がかりでした。原因のひとつに、JP、日本郵便の情報が錯綜していたことがありました。通常、国内国外を問わず、本の出荷は郵便冊子小包、Printed Matterを使っています。ある程度重量のあるもので、印刷物に関しては、もっとも安価に送ることができるからです。国内は3kgまで、海外は5kgまで、という制限はありますが、宅配便やEMSを使うよりかなり安価に本を送ることができます。ただし追跡調査ができないため、何かあったとき困ります。国内はまあほとんど心配ないのですが、海外の場合は国によって処理もいろいろで、かかる日数も含めてばらつきがあります。

今回のマドリードへの出荷は、いつもより量が多く、総重量が10kg近くになりそうでした。Printed Matterは5kg以内なので、なんとか調整して、箱の重量も含めて5kg以下の小包を二つ作ることにしました。これだけの量になると、送料も大きいですし、元の本の代金も大きいので、何か安全対策をしたいと思いました。去年、一度海外への発送で、4ヶ月後に荷物が戻ってきてしまったこともあって、できるだけの手を打とうと思いました。EMSで送ってしまえば、何の苦労もないわけですが、値段が(今回の場合でいうと)1.6倍くらいします。海外の場合、送料の全額を版元で持つのはきついので、一部だけ負担しています。注文する側も、送料はできるだけ減らしたいのは当然なので、こちらもできる限り安く送れる方法を提案しています。ということで、Printed Matterの中のSAL便と言われるエコノミー航空便を使うことが多いです。これは航空便ではあるのですが、飛行機の貨物の空き状態によって積み込むので、航空便なら1週間かかる場合、SAL便では3週間くらいの巾を見ておく必要があります。今回は注文主の希望もあってこれを使いました。船便だと月単位ですから、ずっと早く着き、航空便より経済的です。

去年の海外便のことがあったので、何か手を打とうと思い、保険をかけることにしました。以前に最寄りの郵便局で聞いたときは、書留を薦められたのですが、今回地元の中央局に問い合わせると、Printed Matterに書留はなく保険しかないとのこと。それで万が一のときのために、保険をかけることにしました。ところが、です。集荷の依頼の電話をかけると、保険のかかる荷物は集荷に行けない、との返事。しかしこちらは10kgもの荷物を持っていく足がありません。さて困った。それでネットのJPのホームページにあるカスタマーサービスに電話で確かめることにしました。すると、です。今度は冊子小包、Printed Matterの集荷にはいっさい対応していません、との返答でした。でももう何年も集荷に来てもらっていますよ、それに冊子の場合、3kgとか5kgのものが複数あることもあって、手で持っていける荷物ではなく、ゆうパックと実質上は変わらないと思いますけど、と言ってもできないの一点張りでした。たしかに、冊子の集荷の場合、10口以上でないと行けない、などと言われたことはありました。でもそれがルールだとすると、10口以上は集荷に来れるわけで、いっさい集荷できないというのとは根本的に違います。

さらに、保険のついたものは何故集荷できないのか、という理由が知りたかったので、できない一点張りの解答に文句を言いました。途中電話口でだいぶ待たされた後、上の者に聞いて調べた後に返答の電話をします、ということになりました。そうこうするうちに、今度は地元の中央局から電話があり、Printed Matterに保険はつけられないそうです、とのこと。えー、だって保険を薦めたのはそちらではなかったですか、と言いました。それで結局、集荷ではなく郵便課の人と話すことになり、話のつづきを聞くと、なんと、Printed Matterは書留シカできないんです、とのこと。それができるのなら、何の問題もありません。書留は追跡調査ができるので、保険をかけるよりずっとこちらの目的に合っています。今回の場合は、保険より費用も安いのです。それでもちろん、小包それぞれにRegistered Mailという書留をつけました。小包一つにつき、410円なので、合計820円。

これで一件落着だとわたしも思いほっとしたのですが、この後がまだありました。集荷に来た職員の方が、こちらの計量申請のまま荷物を持ち帰ったため、局の電子計量器で計るとわずかに重量がオーバーしていたそうで、さらに小包サイズを計っていかなかったため、サイズも9cmオーバーだったと電話がありました。サイズについては今まで引っかかったことがなかったので、わたしも制限があること自体を知りませんでした。そして集荷に来た局の人も知らなかったそうです。。。重量に関しては、こちらは2kgの電子計量器で計ったものを換算して総重量を出しています。ですから多少のずれは出ることがあります。こちらにも責任はあると思いましたが、こんなに時間と手間がかかって結局翌日の発送になってしまったのは、やはり郵便局の商品、サービスに関する情報が職員(社員?)すみずみまで、行き渡っていないからでしょう。

JPになって、集荷の際、端末で領収書の処理をするようになり、だいぶ集荷作業の時間は短縮されました。以前は何枚も手書きの領収書を書かなくてはならず、ずいぶん待たされたものです。ただ端末の使い方がわからず、局に問い合わせしなければならなくて手間どることはありますが。

保険のついた小包は何故集荷できないか、の解答は、保険は重量や中身の価値によって料金が細かく変わってくるので、窓口での対応に限っています、ということでした。ひとつは集荷に来る局員の人が持ってくる秤が、電子計量器でなく、正確さが求められる保険業務には向かない、ということがあるのかもしれないと思いました。今までの経験でも、秤の台が外れてしまったり、ガタガタしていて計量が不可能だったりしたことがあるのです。また保険の中身による保険料の計算も、今の状態で集荷の局員にはまかせられない、あるいは情報の共有化や社内教育ができていない、ということなのかもしれません。いずれにしても、顧客の出荷事情とは関係ないところでルールができているように思いました。そのあたり、民営化のプロセスの中で(もうしてますが)、何が問題なのか、顧客は何を求めているのか、よおく考えて進化していってもらいたいものです。冊子小包や郵便振替など、個人や小規模組織にとって便利な、安く使えるサービスはなくすことなく。



出荷用の箱や商品、ガムテープ、秤、計算器、伝票などが散らばる作業テーブル。書棚の右側は在庫用の戸棚。ここも年々一杯になってきた。






2008.1.28 追記2:郵便振替の件
26日付けで書いた追記(この記事の下)についての、調査を週明けの今日行ない、事実確認をしました。ゆうちょ銀行(JP Bank)振替課に電話で問い合わせしたところ、郵政公社の民営化にともない、2007年10月1日より振替手数料を改定したとのこと。送金時の振替手数料は、窓口の場合、3万円未満が100円から120円に、3万円以上が330円に(以前は10万円未満が150円、100万円未満が250円)、ATMを使った場合は3万円未満が60円から80円に、3万円以上が290円(旧料金は不明)となったそうだ。わたしがインターネットで得た情報、3万円以下が420円というのは、普通為替の手数料だったようだ。ゆうちょ銀行のページをはじめ、他の情報ページを見ていく段階で、情報の読み取り違い、言葉の誤認(通常払い込み、郵便振替、普通為替など)があったためのようだ。郵便振替は料金は上がったものの、旧郵政公社の仕組を引き継ぎ、そのまま継承されていく予定とのこと。またこの値上げに関して、旧郵政公社は2007年5月にお知らせを送っているとのことだった。これについてはこちらに受け取った覚えがないので、何とも言えない。あれだけ神経を使っていたのだから見逃すはずがない、と思うが、送ったことは事実らしい。ということで、2006年4月の値上げから、わずか1年半後のさらなる値上げをどう受け取るかはあるけれど、とりあえず、他の送金方法より(少なくともATMを使い、3万円未満なら)安いので、行く末を見守りながら、当分これを使っていこうと思っている。(Happano Storeの本のオーダーページの情報を、この問い合わせ後に、新規料金に直しました。)

ところで、今回問い合わせをしたゆうちょ銀行貯金事務センターの係の方の対応は、今回のJPまわりの問い合わせの中でもっとも優れたものだったように思う。商品やサービスに対する知識が自前であったし、説明の仕方も丁寧かつ親切だった。自前、と書いたのは、即答できずに電話口で長いこと待たされたり、他の担当に変わるなどのことなく、質問に対して速やかに答えてくれたから。こういう対応ができるのは、JPに限らず最近すごく少ないように思う。さらに、今後のことの話の中で、他の銀行に比べて郵便振替が個人や小規模組織にとって貴重であることを伝えると、即座に、上部にもこういう要望があることは伝えると返ってきた。こういうことを自ら言う人も非常に珍しい。JP Bankの中に一人でもこういう人がいたことは、今後に期待がもてることのように思える。そうであってほしい。

この問い合わせの中で、国際送金(International Postal Money Order) についても聞いてみたが、こちらは送金手数料が大幅にアップしていた。葉っぱの坑夫では最近はPaypalを使うことが多いので気づかなかったが、2006年4月より、海外への送金手数料は一律2500円となったそうだ。以前は、1万円以下の場合、600円前後ではなかったか。小額送金に対応している唯一の優れた仕組だったのにと非常に残念。しかも郵便局のあるところなら、ほぼ世界中(一部の国は除くが)で使えて、銀行の高額手数料を払わずにすんで便利だったのだ。送金を受け取けた側の手数料は以前のまま、無料であることが唯一の救いとなった。実際にはこちらの方が葉っぱの坑夫としては、使うことが多い。


2008.1.26 追記:(上記1.28「郵便振替の件」を合わせてお読みください。)
最後の行に書いた「郵便振替」ですが、民営化にともない、日本郵政公社はゆうちょ銀行への移行の際、このサービスを廃止していた。。。民営化問題が起きた際にもっとも心配していた事がすでに起こっていたのだ。廃止? いや、旧振替用紙はそのまま使えるのだから、廃止とも言えない。手数料を上げての、違うサービスへの自動移行なのか。

旧郵政公社あるいはゆうちょ銀行から、利用者(口座の持ち主)である葉っぱの坑夫へ、その旨のお知らせは一切届いていない。ゆうちょ銀行のウェブのページを見て驚いたのだが、手数料が60円(ATM)〜100円(窓口)だった3万円以下の送金が、420円と銀行並みになっている。

これはどういうことなのだろう。郵政公社のときに、手数料が上がった際(2006年4月、70円から100円に)は、きちんとお知らせが届いていた。それで葉っぱの坑夫として、本の購入者へのお知らせとして、その旨ウェブ上で知らせたり、以前と手数料の変わらないATM送金(60円)を薦めたりしてきたのだが。
この問題に関して、なぜこのようなことが起きているのか引き続き調査して報告したい。同時に、葉っぱの本の購入者の送金方法を今後どうするべきか、至急検討しなくてはいけない。民営化以降、本の購入者の方々に、420円もの手数料を負担させてしまっていたこと、どうやって責任をとったらいいのか。それも合わせて考えなくてはいけない。

20080120

「楽しいカタチの帽子」展

本のセレクトと棚の並びが楽しいブックショップ、reading finerefine にスソ アキコさんの帽子の本の展示を見に行ってきました。
readingではいつも、1冊の本をめぐる展示をしていますが、今回は「楽しいカタチの帽子」(文化出版局)に登場する帽子がたくさん並んでいて、あるいは吊り下げられていて、そしてそれが中には「え、あれが帽子なの?」というものもあったりするので、見ているうちに、試しにかぶらせてもらっているうちに、どんどん楽しくなってきます。どんな帽子があるのかというと、バナナの帽子とか、タコの帽子とか、さなぎの帽子とか、栗とか和菓子の帽子もあります。変わったカタチの帽子と言うこともできますが、スソさんによると、扮装とかパフォーマンスではなくて、普通に日常の中でかぶってほしい帽子だそうです。なるほど。

たしかにちょっと(時にかなり)変わった帽子ではありますけど、かぶっていると生きているのがカナリ楽しくなりそうな帽子だと思いました。そら豆や砂丘の帽子をかぶってお出かけして、あるいは会社に行って、楽しくないわけがありません。そういうものを(形の場合もありますが、イメージをかぶる、ということもあるので)かぶれる精神状態というものがもう、心の豊かさだと思うのです。作者があるイメージを託してつくったものには、受け取った人がそこからまた何か自分のものを発展させられる種が潜んでいそうです。

展示の帽子は上からゴムで吊り下がっているのも含めて、言えばかぶらせてもらえます。かぶって鏡で見てみるだけでも楽しいです。何か不思議なふんいきの人になった気分が味わえます。そして本には、型紙のついたものも何点か載っているので、展示物をようく見ておいて、自分でつくってみるのも楽しそうです。「楽しいカタチの帽子」は表紙からしてそうですが、写真もイラストも文章も、とにかく遊びがいっぱいで見てるだけで楽しく、心が解放されていく感じ。その上、帽子づくりの基本にも触れられているので、入門書としてもいいかもしれません。初めての(わたしのような)人が、こんなきっかけで自分の帽子をつくり始めるとしたら、ものづくりのスタートとして、また自分のイメージ発見として、画期的なことかも。本の中のイラストもスソさんが描いています。

1月24日(木)まで。銀座松坂屋地下2階 reading finerefine にて。


20080108

フクロウの夢、サギの現実

あたらしいとし。フクロウの夢を見た。窓の外に大きく羽ばたく鳥がいて、すぐにフクロウだとわかった。顔をこちらに見せたので確かにフクロウと確認。去年の暮れからずっと動物写真家・宮崎学(がく)さんの写真絵本や写真集を見ているせいだろう。多くの写真が、ガクさんの住む伊那谷で撮られたものだが、変わっているのはほとんどの写真がロボットカメラといって、ガクさん考案によるセンサー付き無人撮影で行なわれていること。野生動物の生態と伊那谷の自然を知りつくしているガクさんならではのアイディアで、それが素晴らしい効力を発揮している。

下の写真の本は伊那谷のフクロウを3年間にわたって、森の中になかば自分が住みこんで(簡易な小屋を建てて)撮影された。最終的にガクさんはフクロウに安全な人間として存在を認められ(顔を覚えられ)、ロボットカメラ以外の撮影法でも写真を撮っている。

ガクさんの本はどれも素晴らしく、写真、文章ともにわくわくするものに溢れている。それはガクさん自身がいつもわくわくしながら、野生動物を見つめているからだ。写真絵本、森の写真動物記シリーズが印象的。「けもの道」「水場」「ワシ・タカの巣」などが出ている。また野生動物の死を扱った写真集や絵本もあり、これもまたかつて見たことのない、誰もやっていない種類の仕事ではないかと思う。これらの本については、葉っぱの坑夫のサイトに近々レビューを載せるつもり。

ところで、年末に家の西に向いた大窓から、サギの姿を見た。大きな白い体、長いくちばしに長い足、他の鳥と見間違いようもないもので、隣家の赤い屋根の上で休んでいた。それは早朝のことだったのだが、最初、幻かと思った。東京郊外(多摩川をわたって少し行った神奈川県側)のこの場所には20年近く住んでいるが、サギなど一度も目にしたことがなかったからだ。でもよくよく考えれば、多摩川もそう遠くはないし、もっと近くにも麻生川や鶴見川などの川が流れているらしいので、サギがいても不思議はないのかもしれない。川の存在など、日常の中ではほとんど意識されていないが(水面が見えている場所は少ないし)。

サギは、写真を撮る間も与えず、南の空に飛びさっていった。夢のように遠い空の中に消えた。コウノトリに似ているせいか、幸福の鳥のイメージがあるサギ。いっぽうフクロウも、(ガクさんによると)、中国や昔の日本では「悪魔を払いのける鳥」とされ、古代ギリシアでは「知恵の女神」として守護神にしていたそう。アイヌでは森の神様であり、インドネシアでは学芸の神様として学校の所在地のマークとなっているとか。でも元々のインドネシアでは、フクロウは「幽霊鳥」として忌み嫌われていた、との話もあるそうで、容姿や賢さなどから様々な見方がされてきたのだろう。




写真の本:「フクロウ」宮崎学著、平凡社より1989年に出版