20140715

子どもたちに起きた大惨事、でも彼らは無力じゃない

「空から火の玉が・・・(南スーダンのロストボーイズ 1987 - 2001)」が発売になりました。1980年代に起きた第二次スーダン内戦のとき、村を襲われて逃げ出した子どもたちが、そのときのサバイバルジャーニーのことを書いたノンフィクションです。
http://happano.org/happano_store/Sorakara/inside-1.html

ムラヒリーンと呼ばれるムスリム系の馬に乗った北部人がやってきたのは、この本の著者ベンソンやアレフォ、ベンジャミンが5〜7歳のときのことでした。突然の襲撃でブッシュに逃げ込んだ子どもたちは、同じように戦火を逃れる避難民の集団と出会い、エチオピアへ、ケニアへと安全な場所を探してさまよい続けます。

約5年間、1600キロの距離を逃げ歩いたのち、最終的にケニアの国境近くにあるカクマ難民キャンプにたどりつきます。依然、両親や家族の無事はわからないままでした。著者三人はそこで、十代の大半を過ごします。そして国際的救済組織の助けで、アメリカに渡ることになりました。

アフリカ、スーダン内戦、難民、移民、こういったことに、それほど関心がもたれていない日本で、この本をどのように伝えていったらいいか、なかなか難しい問題です。アメリカの場合は、世界各地からたくさんの難民を受け入れていることもあって、まず元難民の市民がそれなりの数住んでいます。去年の夏に葉っぱの坑夫で出版した「私たちみんなが探してるゴロツキ」は、ベトナム戦争後に国を逃れてアメリカに渡った女の子の話でした。スーダン、ベトナム、どちらの原著も、アメリカのアマゾンではたくさんのレビュアーが書評を書いています。一方日本の政治や社会は、難民や移民に消極的です。アメリカのように関心を引くことは至難の技に見えます。

国際社会の問題として、世界の難民問題として、人道的な関心として、この本を紹介することは、あまり効果がないかもしれないと少々弱気です。これに限らず、世界はさまざまな問題を抱えているわけですから。

一つアプローチとしてあるかな、と思っているのは、子どもの潜在能力や人間の正のパワーを伝える本として訴えることです。大人に頼らなくては生きていけそうもない、小さな子どもたちにも、意外に大きな生きる力が備わっている、秘められている、ということをこの本を読んでわたしは学びました。生存能力を試される機会が不幸にも襲ったとき、決して子どもたちは無力なままではありません。自分を救うだけの知恵と勇気と実行力があるのです。
アフリカの子どもだからではありません。使う機会がないだけで、日本の子どもにも、ちゃんと備わっている能力だと思います。

その意味で、お母さんやお父さん、学校の先生に興味をもってもらって、子どもたちに自分の中にある生きる力を知る本として、読んであげてほしいな、というようにも思っています。「空から火の玉が」は、子どものために書かれた本ではないので、子どもが自分で読むには、多少難しいかもしれません。この本の子供版を出す、という話もアメリカでは起きているようなので、そのときは日本語にして、今度こそは直接子ども自身に読んでもらえたら、という希望ももっています。