The Lost Luggage
葉っぱの坑夫のFragmentsや対話ブログ「グロスマンを読みながら」の寄稿者・大桑千花さんの本が出版されました。タイトルは「ロスト・ラゲッジ--- エルサレムのかたすみで」(而立書房、2006年12月) amazon他いくつかのネット書店で取り扱いがあります。大桑さんと葉っぱの坑夫のおつきあいももう3年以上になるでしょうか。最初にエルサレムから詩が届いたときはちょっと驚きました。エルサレムという土地についての知識があまりなく、そこがとてつもなく遠い存在に思えたからです。投稿してもらった詩を読み、プロフィールなどを知っても、そのギャップはなかなか埋まりませんでした。なぜエルサレムにいるのだろう、何を思って暮らしているのだろう、日本とどんな風にいろんなことが違うのだろう、これからもずっとエルサレムに住み続けるのだろうか、などつきない興味で頭はいっぱいでしたが、ぶしつけに質問ばかりするわけにもいかず、日常的なメール交換をするうちにだんだん謎がとけていった感じです。
そんな中、大桑さんがブログThe lost luggageをスタートさせたときは嬉しかったです。エルサレムの町で、近所の人々や友人たちと、仲のいい通りの猫たちと、どんな風に暮らしているかが文章からうかがえました。またイスラエルという国がかかえる問題をどのように受けとめているのかも。
ただそれでわたしの最初に思った疑問の数々がすべてすっきり謎解きされたかというと、そうでもないのです。ぼんやりわかってきたことはあるのですが、何かまだ大切な部分、核心がはっきり見えてこない気がしていました。それはいまも続いています。
大桑さんが現在進行形で生き続けている存在であり、大桑さん自身にも自覚されていないことがまだまだあるからかもしれません。人が、変化しながらその生を漂流しつづけている間は、その形や全容は捉えがたいものなのでしょう。
本になった「ロスト・ラゲッジ」をこの年末にでもゆっくり読んでみたいと思っています。