20070417

アジア一のラッキーボーイ、朴智星

サッカーの欧州チャンピオンリーグがいま4チームを残すところまで来ている。今年はイタリアのACミラン以外、残り3つはイギリスのチームで、その中に韓国出身の朴智星(パク・チソン)が所属するマンチェスター・ユナイテッド(MU)が入っている。MUと言えばイギリスのプレミアリーグの中でも最強のチーム、ビッグクラブ。今期のプレミアリーグでもトップの座を邁進中。朴はそのMUでサイドのMF(ミッドフィルダー)としてほぼレギュラーの位置を確保している。その活躍ぶりはわたしも、J2(CS放送)の「MUTV」で毎週目にしているし、応援もしている。

アジア人の選手が欧州チャンピオンリーグ(CL)で、しかも4強に残るチームで活躍することはすごいことだ。日本の中では、最も世界的に活躍した中田英寿も経験のないこと。それを成している強運の朴は、2年前の2005年のチャンピオンリーグの4強にも、PSV(オランダ)の中心選手として出場し活躍していた。なんというラッキーボーイ。PVSの監督は当時、日韓開催W杯のとき韓国チームを率いたヒディンク監督。PSVはオランダリーグではトップクラスのチームだけれど、欧州CLの4強に残ったこと自体がかなりの健闘だったのではと思う。2005年のPSVがそれだけ強かったのだと思う。そういうチームで朴はプレーしていた。

朴は2002年のW杯後、ヒディンクに認められオランダに渡りPSVで活躍し、2006年よりプレミアリーグMUに移籍した。インタネット等の記事によると、2005年欧州CL、対ACミラン準決勝戦での活躍ぶりが、MUファーガソン監督の目にとまり移籍へのはずみをつけたとか。

今年26歳になる朴選手はサッカー選手としては小柄で、プレーもどちらかというと地味。よく走りまわり、パスやシュートのセンスももちろんいいけれど、練習熱心、非常な努力家としてチームメイトから一目置かれていると聞く。今をときめくロナウド(ポルトガル出身)やルーニーのいるチームで、共にプレイしている姿はいつ見ても心ときめく。テレビの日本語解説者が「ああ、いいなー、日本からも誰か入らないかなあ」とため息を再三つく気持ちもわかる。MUには最近、中国から若手のプレイヤーが入ったようで、まだ出場機会は少なくわたしもプレーを見たことはないが、いずれ目にすることだろう。

2、3試合前にひざを負傷して休養中の朴だが、欧州CL準決勝戦に顔を見せてくれるのか、とても楽しみにしている。MUTVは毎週火曜日夜、CSのJ2で放映されている。

20070416

ドゥブレの真偽

前回の記事を書いたのちに、学生時代、政治科学を専攻していたスペイン人の友人と共和制について話をした。彼が言うには、スペインの公立学校において十字架を飾るなどの行為は、法的に違法となるからできないと。自分はカトリックの学校に行っていたが、途中から自分の意志で公立に変わった。だから確かだと言うのだ。ではドゥブレの言う「スペインの公立学校には、あたりまえのように、十字架が飾られている」という記述はどこから出てきたものなのか。これが書かれた時点(1989年)以前に、友人は公立学校の生徒だった。

友人によれば、フランコ政権時のスペインの宗教(カトリック)は、政治と密接な関係にあった。だからフランコ後の政権は王制ではあったが、政教分離を法的にも定めてはっきりさせようとしたというのだ。ドゥブレが勘違いしているのか、友人の記憶違いなのか。もしドゥブレが間違ったことを書いているとしたら重大だ。エッセー「あなたはデモクラットか、それとも共和主義者か」の中での非宗教性についての論考は、ひとつの主軸となるもので、自分の言わんとすることを証明していく過程で謝った事実認識があったとしたら、論考自体、意味をなさないものになる。

これとは逆に、フランスの公の場での非宗教性を疑う声も聞いた。たとえ法制化していても、市民レベルではキリスト教国の色合いが強いということかもしれない。

ドゥブレのエッセーは現状分析というよりは、試論として「共和制」の可能性について述べているのかもしれないが、読むものにとっては、細部の誤りは全体の論理への疑いへとつながる。こういうエッセーではとくに、一つ一つの事実認識が重要で、そこに真実がないとすべてが砂上の楼閣となって崩れ落ちてしまうように思う。
「思想としての<共和国>」の版元、みすず書房にもできれば確かめてみたい。去年6月に出た、まだ新刊と言える本なのだ。