20090125

共同出版が開く可能性(2)

前回は共同出版の与える恩恵について書いてみたが、今回はもう少し実務的なことに触れてみたい。紙による本の出版は物質がともなうので、最終的にはモノを動かさなければ完了しない。一つは印刷であり、もう一つは物流。海外との共同出版の場合、物理的距離が大きいため、物流のコストは最初にある程度換算しておいた方が安心だ。それでも一ヵ所で印刷することで単価は低く押えられるのだから、全体としてはもちろんコストダウンになる。

一ヵ所で印刷するということは、どちらかの版元のサイドで印刷所を選ぶことになる。印刷をするサイドの版元は当然、印刷から納品までを実務的に動かすことになる。その分実作業に時間、労力を当てることになるが、身近で進行状況を追っていけるので安心だし、逐次作る喜びに触れていられる。一方、印刷をしないサイドの版元は、PDFなどで要所要所の確認や提案はできるけれど、やはり距離がある分、そして実物に接していない分(原画でも、印刷の状態でも)、身近に進行を感じるというわけにはいかない。今一つ実地での参加度合いが薄くならざるおえないし、もう一方の版元を信頼してまかせる気持ちがないと難しいところがある。印刷する紙の選択などでは、厚みや手触りなど実物がないと判断できないので、航空便で送る場合もある。

2005年にニーブスと「rabbit and turtle」を作ったときは最初はまったく白紙状態から入った。オフセットでカラー印刷することを前提に、ミヤギさんが絵を描く期間があって、8割がた仕上がったところでわたしがまず見せてもらった。そのドキドキ感を味わえるのは作家と同じ日本に住んでいる地の利が大きいわけだが、スイスのニーブスにもすぐ、絵をスキャンしてデータで送った。それで双方が気に入った、素晴らしい、ということで進行決定となり、作家に残りの絵を仕上げてもらった。このあたりで、本の判型やデザイナーの話が具体的になり、判型はニーブスがその頃出そうとしていたアーティストブックのシリーズに合わせてB5の変形で、ページ数は32ページ程度だけれど背はつけて、などと決めていった。印刷所については、これは他の海外アーティストからも言われることがあるが、日本の印刷技術は高いから安心してまかせられる、ということもあり、また見積をとった結果コスト的に見合う印刷所が見つかったことなどから、日本での印刷の方向に進んでいった。またそれと前後して、ブックデザインを日本のデザイナーにお願いすることになり、その面からも日本での印刷が決定された。デザイナーと印刷所が地理的に離れていても、本をつくることは不可能ではないが、印刷の過程には校正など細かい実物検証があることから、同じエリアに住んでいたほうが即時に詳細にコミュニケーションがとれて、より良いと思われる。やったことはないが、たとえばドイツの印刷所で本を印刷し、デザイナーが日本にいる日本人の場合、指示ややりとりの言語の問題も出てくるだろう。また言葉の問題だけでなく、印刷における習慣や指示の出し方、その他想像外の行き違いのリスクもあるかもしれない。それを知ることは興味深いとは思うけれど。

今回の「AKAZUKIN」の場合も、デザイナーが日本にいる日本人であったことや、前回の出版で日本での印刷が信頼性が高いことが証明されたので日本での印刷となった。見積の結果、前回の印刷所とは違うところでの印刷となったけれど、海外への納品作業も含め、大きな問題なく進んだ。印刷所もそれぞれ特徴があって、前回の印刷屋さんのときは担当者本人が、営業車で郵便局まで運び込み、海外出荷一切の手続をしてくれた。長い船旅を考えて丁寧な梱包をしてくれたようで、到着後スイスから感謝の言葉が届いたことを覚えている。今回の印刷屋さんの場合は、専属の配送会社があり、海外出荷も慣れているようだった。あらかじめこちらで書き込んだ必要書類を渡し、あとはおまかせした。

海外との共同出版では最初にも書いたように、物流のところで、国内とは比べものにならない経費と時間がかかり、また神経も使う。安全に確実に着くかどうかだけでも、リスクは決して小さくない。海外への輸送は郵便を使うが、あとで書く国際送金と同様、民間のものはコスト的にとても使えるものではない。郵便ではEMS(国際スピード郵便)、航空便、SAL便、船便などがあり、重量のあるものを安価に運ぶには船便が一番だ。ただし、日本からヨーロッパまでだと1ヶ月半から2ヶ月近くかかり、気の長い話である。しかも船便の場合、かかる期間が確実ではなく巾があるので、だいたいのところで納得しなければならない。SAL便というのはエコノミーとも言われている航空便で、輸送の空きをみて荷を積むので航空便より優先順位が低く、そのため時間がかかる。それでもアメリカ、ヨーロッパならだいたい3週間くらいで着くことが多いので、それほど重量のない輸送のときには便利である。航空便よりかなり安く利用できる。また5kg以内の印刷物であれば、Printed Matterという印刷物に対する割引制度があるので、SAL、Printed Matterこの二つを併用して使えばさらに安く送れる。

今回の「AKAZUKIN」では、当初ハードカバーでの出版というアイディアも出ていた。国内での出版であれば、ひとつの選択肢として容易にテーブルに乗せられることも、輸送のことを考えると、どうしてもハードルが高くなってしまう。本の仕様によっては2倍、3倍の重量になるからだ。ただでさえ負担の大きい物流にさらに重量で負荷をかけるなら、よほどのプランと思い入れがないことには選択できないと思ってしまう。「rabbit and turtle」や「AKAZUKIN」のような100gちょっとの薄くて軽い本でも五百、六百部となると、30kgの荷物を3個、4個と送らないといけなくなる。もちろん本の仕様と物流とは直接関係はない。ある本のプランが物流によって制限されるのはいいことではないかもしれない。その本のベストの形を追求した結果がハードカバーであるのなら、たとえ物流に負荷がかかっても話のテーブルに乗せて皆で充分に討議すべきだろう。

共同出版において最後の仕上げとなるのが、経費の分配とその受け渡しである。インターネットには国際間でも使えるPAYPALという便利な送金システムがある。葉っぱの坑夫でも海外からの本の購入者、海外の書店からの支払いなどに使うことも多く、最近では日本の取引先や本購入者との間でも利用がある。信頼性は高いと思うが、印刷代のように金額が高額になったときは国際郵便為替(International Postal Money Order)を使っている。Paypalが登場するまでは、小額でも海外送金はすべてこれを使っていた。

国際郵便為替というのは郵便局が発行する為替で、オーストラリアなど例外はあるけれど、各国の郵便局で広く取り扱われているもの。日本からの送金では、現在は送金手数料が一律2500円と高くなってしまったが、民営化する少し前までは小額送金なら数百円程度の手数料だったと思う。現在の一律2500円でも銀行の手数料と比べたらかなり低額なので、国際送金のときはこれを利用する方が理にかなっている。銀行からの国際送金は銀行によって手数料が違うこと(最低でも数千円はするようだ)に加え、送金中にどのような銀行を通過するかなど状況によってかなり高額になる場合もあると聞いている。葉っぱの坑夫では日本円で5万円くらいまではPAYPALを利用しているが、それ以上になったときは国際為替を使っている。送金時の手数料に関しては、ヨーロッパの国でもだいたい郵貯と同程度の金額のようである。受け取りのときは手数料はかからない。

国際為替を使ったときの問題点は、海外の郵便局がその手続にあまり慣れていないことから起こることが多い。今までヨーロッパからの送金で2度ほど問題が生じたことがある。スペイン、スイス、両方で起きた間違いは、郵便局員の宛名(受領者名)の書き違えという単純ミスで、そのために受け取りができなかったこともある。確か再発行してもらって、やっと受け取れた。もう一つの経験では、宛名の書き違えに加え、郵便振替の口座宛てに送金してもらおうとしたら、口座番号以外に銀行コードを要求された。郵貯に問い合わせると「そのようなものはない」の一点張りで、そこで送金手続が一時ストップしてしまった。送金元の郵便局が要求してきたのはSWIFT CODEというもので、これがないと送金ができないというのだ。こちらの郵便局ではSWIFT CODEなるものが何か知らなかったし、逆にSWIFTとはどういう意味か、日本語で言ってくれ、と言われてしまった。再度電話で郵貯に聞いみたが、「こちらにはコードはない。なくても送金できるはず」とのことで、話はまったく進まない。こんなやりとりを何回かスイスの版元とした後に、口座宛てではなく、住所宛てに送ってもらうようにしたらとりあえず為替は手元に届いた。

しかし宛名(受領者名)に一字書き違えがあったことと、葉っぱの坑夫の団体名が入っていたことから、話がこじれた。書き違えの方はとりあえず大めに見てもらえることになったが、団体として受け取るということであれば、その団体の規約書を提出してそれが正当な団体と認可されなければ受け取りができないということになった。架空の団体への送金を防止するため、とのこと。多分、個人の身元確認同様、規制がここのところ強化されているのではないか。口座宛て送金で口座にお金が直接入っていれば、規約書を改めて出す必要はなかった。でもそのときは規約書を提出して、それを認可してもらうことが最も速い処理方法と思ったので、規約書の最新版を作り提出、無事認可され、送金も受け取れた。

その後、SWIFT CODEについては地元の郵便局の方が調査をしてくれて、これは国際間で銀行を特定するための番号であるが、郵貯はその協会に入っていないためコードはない。従ってコードなしで送金できるそうだ。しかし海外の郵便局にそのことが伝わっていないため(あるいは郵貯が伝えていないため)、しばしば日本の受領者がこのコードを要求され、郵貯に問い合わせが来ることがあるということがわかった。でもこの問題点が郵貯内で共有されていないため、わたしが電話して問い合わせしたときのように、「こちらにはコードはありません」の一点張りの対応になってしまっているのだ。もし、「こちらは協会に入っていないためコードはないが、コードなしで送金できるので、海外の送金元の局員にそのことを強く主張してください」とでも言ってくれれば、話はずっと簡単に済んだはず。

ということで、元々は便利で銀行よりずっと安価な国際郵便為替だが、国際間、郵貯内ともに情報共有がきちんとできていないため、このような面倒が起きてしまう。これからこれを利用する人は、郵便振替口座をもっている場合は、その口座宛てに送金してもらうのが簡単で、その場合コードを要求されたら上のような説明をしてコードなし送ってもらうようにしたらいい。住所宛てで送ってもらう場合は、為替が郵便で届くわけだが、もし団体や会社宛で送ってもらうなら規約書を整備しておくこと、そうでなければ個人名で送ってもらい身分証明書を為替といっしょに持って郵便局に出向き、窓口で払い出しすればいい。ちなみに口座宛て送金の方が早く手元に届き、数日から1週間程度だったように記憶している。住所宛てだと1週間以上かかるかもしれない。

このような実務的なことがクリアになっていれば、コストの想定も最初からある程度できるし、時間や手間、リスクについてもわかった上で進められるので安心ではないか。海外との共同出版は、半分はこのような手続上の煩雑さや未知なこと、判例の少ないことをやらなければならないことからくる不安があると思う。でもそれほど大変というわけでもなく、小さな規模の版元がやる場合も、最低限の国際間のシステムは整っているので、面白そうなプランがあれば、そしてコラボレートしてみたい版元がみつかったら、やってみる価値はおおいにあると思う。


*お知らせ
1. 1月19日発売の「イラストノート」(誠文堂新光社)にミヤギユカリさんのインタビューや作品紹介が掲載されています。特集「オリジナリティーが光る色彩表現の世界」の中で、引地渉、牧かほりなど数名のイラストレーターとともに取り上げられていますが、各作家の作品メイキングをレポートしたページなどもあり、ページ数もたっぷりで興味深い作家紹介となっています。
2. 青山ブックセンター本店(東京・青山)、ブックファースト新宿店にて「ミヤギユカリのブック&グッズフェア」を開催中です。詳細はこちら

20090109

共同出版が開く可能性(1)

新刊「AKAZUKIN」出版後、1ヶ月がたった。販売開始と同時に展示やレセプション、フェアを都内数カ所でやり、本は日本各地のインディペンデントな本屋さんやネット書店にも置かれ、遠くはマドリード、ベルリン、チューリッヒなどのブックショップにも飛んでいき、Lingkaran、Vogueといった雑誌でも紹介された。2008年から2009年への変わり目に、AKAZUKINは森ではなく、町中へ読者の元へと冒険の旅に出ていった。

出版には企画、制作、販売と三つのステップがあると思うが、今回の出版では、最初の二つ、企画と制作をスイスのNievesというインディペンデントの出版社と協同/共同でおこなった。2005年に同じ著者(ミヤギユカリ)の「rabbit and turtle」という本でコラボレート出版しているので、今回は2回目となる。2回の共同出版をやってみて、この方法は、特に小さな出版をする者にとってかなり有効な方法ではないかと感じている。国内でのコラボレートにも利点はあると思うが、なかでも海外の版元との出版はいろいろな意味で可能性を広げることができそうに思う。もちろん、作品が両版元にとって意味あるものでなければ実現しないし、作品への信頼や出版への信念、共同する版元との信頼関係がなければ、出版までの長い道のりを協力し合って超えていくことは不可能だろう。そういう意味では自社だけでの出版より、数倍の労力や神経をつかうこともあり、誰もが簡単にできることではないかもしれない。

それでも、と思う。共同出版には様々な利点がある。最初に誰もが思いつくのは印刷実費の軽減である。オフセット印刷では部数が多いほど、1冊にかかるコストは低くなる。たとえば500部で300,000円かかる場合も、1000部なら450,000円となり1冊の印刷実費が600円から450円に下げられるというようなことだ。コスト、中でも印刷コストは小さな出版をする者にとっては、印刷方法の選択にも関わる最大の問題と言っていい。300部以下の出版ならオンデマンド印刷を選択する方がコストは抑えられるが、この印刷方法は画像の精度が低いことからテキスト中心のモノクロ印刷に向いている。写真やカラーのイラストの本で500部以上の出版であれば、今のところオフセット印刷が無難かつ唯一の方法と思われる。

共同出版するということは、上に書いた理由により初版の部数を底上げすることになる。部数が多いほど印刷単価は下がるし、部数を多く刷ることは流通経路の確保さえできれば、それだけ本が世の中に広く行き渡り、多くの人に手に取られ知られることに繋がる。100部、200部の出版にももちろんそれぞれ意味や意義はあり、葉っぱの坑夫もNievesも自社のみの少部数出版ではオフセットではない方法(オンデマンド印刷やフォトコピーによる)を採用してきている。部数と印刷手法の選択は、作品の性質や内容、使用言語、そういった要素から導き出される「必要な数」と関係している。

共同出版においては、まず出版する作品が企画の中心にあり、どちらからの発案であれ(あるいは著者からの発案でも)、両版元が同程度の企画内容への賛同や共感がなければスタートは切れない。作品への信頼は最も大切な要素であり、出版の動機である。これに関しては自社だけでの出版と基本的には変わらない。共同出版においては、この作品への共感や信頼があってまず二者は結ばれ、そのことで共同/協同することの基礎がつくられる。外からはかなり違って見える版元同士が一冊の本づくりで共同/協同できるのは、それぞれの相違ではなく、一致点に注目して活動するからだ。

企画から制作段階に移行すると、さまざまな詳細事項の取り決めにおいて意見交換が活発に行なわれる。「作品への共感と信頼」で結ばれた両者ではあっても、具体的に本のイメージを固めていく段階では、それぞれ異なった考えや意見が出てくる。それはその出版を自社内でどう位置づけているかに関わることでもあるが、それだけでなく、両版元がそれまでにやってきたことや出版物のラインアップ、なぜ出版を始めたか、これからどういう方向に向かおうとしているか、などとも深く関係することである。それぞれの版元のアイデンティティの表出といってもいいと思う。本のデザイナーの選択から、本の仕様、販売価格に至るまで、両者が納得いくまで話し合う。AKAZUKINの場合は、すべてメールでの討議。どちらの母語でもない英語が使われた。互いに不自由な第二言語を使いながらの話し合いは、ときに話をなるべく簡略にしようという方向に動くこともあるし(とはいえ簡略化するには、基本の信頼関係がないと難しい。誤解を生むことになるから)、ごく小さな事項(と言っていいかわからないが、たとえば奥付の表記の仕方とか)に何回も意見のやりとりをして妥協点を見つけることもある。

販売価格のように、それぞれの国の事情(マーケットにおける本の価格の平均値や常識、本に対する思想など)が反映する要素もある。一般に日本では「本とは紙の値段」というような価格センスもあるようで、「こんなに薄い本なのに2000円もする!」というような感想があったりもするらしい。本の歴史、出版の歴史の長いヨーロッパでは、本は文化であり内容であるという思想があるように感じられる。また販売価格はそういった事情とは別に、それぞれの版元の利益構造に対する考え方も反映する。実際、インディペンデントの出版では、個々の出版物ごとに流通のための大きな経費負担があったり、印刷経費だけでは算出できない予備費用や様々なリスクをみておかなければならないことから、あらかじめ価格にその分を含めておく必要もある。1回きりで終わらせず、出版を続けていくためには、買ってもらえる価格と最低限の利益の保証の調整をしなくてはならない。最低限の利益とは、葉っぱの坑夫の場合で言うと、何冊売れたら元(この場合はほぼ印刷経費のみの試算)が取れるかを基準にしている。つまり何冊売れたところで、印刷経費に達するかという計算である。損益分岐点と言われるものだ。(ただし日本の書店は委託販売が主なので、実際にお客さんが店で買い、何ヶ月か後に店から精算されたところで初めて利益となる。また、葉っぱの坑夫のサイトで直接読者に売る場合は違うが、書店などに卸して販売するときはそこに書店のマージンが入ってくるので、販売価格から何割か引いた金額、卸値で計算する。) 少部数出版では、総コストの絶対金額は低くても、一冊にかかる印刷単価が高くなるので、どうしても「こんなに薄い本なのに値段が高い!」本になってしまうケースが多い。これは一般の読者にはなかなか理解されにくいことだとは思うが。それぞれの国の出版文化、と言われることの中には、こういう見えにくいことへの理解も含まれているのではないかと思う。

国事情の違う版元の共同出版においては、値段ひとつ決めるにも、個々の版元の思想ややり方とともに、本を販売する各自のマーケットの性質や仕組も反映される。互いがその詳しい事情を知らずとも、もちろんある程度の説明はして理解を得るようにするけれど、大枠で了解して制作を進めていくには、やはり最初に書いた「作品への共感と信頼」、そしてそれを基盤にした互いへの信頼と互いの仕事に対する尊敬、尊重の念がないと難しい。

共同出版はコストの点だけでなく、マーケットを広げるという意味でも可能性を広げ、大きなメリットがある。とくに海外との共同であれば、その飛距離も範囲も飛躍的に伸びる。他に考えられる利点、資源としては、違う文化背景を背負った二者が一冊の本を作り上げるという意味でも貴重だと思う。一冊の本の完成とは、一つの小さな宇宙を生み出すことだからだ。今紛争中のイスラエルとパレスチナ自治政府の政権の一つであるハマスがもし一冊の本を作ろうとしたら、、、あるいはハマスともう一つの政党ファタハが一冊の本を作ろうとしたら、と想像すれば、共同の本づくりには何が必要とされるのかの一つのヒントになるかもしれない。それはそれぞれにとっての利益が見えなければ達成できないことだが、それ以外にそれぞれが描く未来、この世界のあり方に対する共通の思想がなければ不可能なこと。何を大げさな、と思われるかもしれないけれど、一つの本をつくって世に出す、というのはそのような意味をもつことだと信じたい。

*現在ブックファースト新宿店で「AKAZUKIN」を含めたミヤギユカリの本とグッズのフェアを開催中です。1月23日からは青山ブックセンター本店で「ミヤギユカリのブック&グッズフェア」がスタートします。詳細はこちら